今回は、富士山の「御中道」といわれる巡礼の道を巡る「御中道巡り(おちゅうどうめぐり)」について、備忘録的に綴っていこうと思います。
御中道とは、遠いむかし富士山の5合目あたりの高さを水平にぐるっと一周するかたちに付けられた道で、富士山頂に3度以上登ったことのある冨士講修験者のみに許された巡礼の道でした。現在は、大部分が危険を伴う荒れた登山道のため登山経験の豊富なベテランハイカー向けの道となっているのが現状です。
一部のルート(河口湖五合目 〜 御庭 〜 大沢崩れ)については、ハイキングコースとして整備されトレッキングも楽しめるようになっています。
地図
地図上に名所スポットをマーキングしました。コース情報
- 総距離:約21km
- 累積標高:約2200m
- およそのコース時間:12時間前後(ハイカーにより大きく異なる)
アクセス情報
現在の主要な登山口のうち「吉田口」「須走口」「富士宮口」から「御中道」に入るルートを記載しています。御中道のルートは時代により通る場所が変わり幾つもあるようですが、現在も踏み跡がある程度あり歩行できそうなルートを選択しました。ちなみに、順巡りは右回り、逆巡りは左回りとして記載しています。
吉田口より入道
順巡り:吉田ルート下山道のシェルターを出たら右に登らず真っ直ぐ。薄い踏み跡やテープのマーキングあり。
逆巡り:
富士急雲上閣の脇から御中道に入る「御中道」の看板あり。
須走口より入道
順巡り:六合目山小屋の「瀬戸館」から20mほど登った九十九折の最初の曲がり角から宝永山方面へ入る。
逆巡り:
六合目山小屋の「瀬戸館」の裏から滑沢へ続く道へ入る。
富士宮口より入道
順巡り:宝永山荘から一般登山道を500mほど登りブル道に入り登り方向へ進む、最初の九十九折で白ペンキのマーキングありそこから入る。
逆巡り:
宝永山へ向かうルートで馬ノ背まで登り、御殿場口下り6合目の分岐から少し下った所から須走ルート方面へ向かう。
名所スポット
小御岳流し
古くは宇津木沢や空木沢と呼ばれていました。現在の吉田ルート登山口の起点になっています。積雪期はバックカントリースキーなどで有名です。吉田大沢
調査中不浄流し
調査中ツバクロ沢
通称:津波黒沢や燕沢。燕の体の色のように黒い岩肌が多い。滝沢
通称:不浄流し滑沢
通称:不浄流し日沢(西沢)
通称:ムナツキ沢市兵衛沢(A)
通称:執杖流し市兵衛沢(B)
通称:執杖流し表大沢
通称:大滑沢や大滑流れ。太平洋側で目立つ大きな沢のため表滑沢と呼ぶ登山者も多い。赤沢
通称:赤滑沢や滑流青沢
調査中箱荒沢(ハコアラサワ)第2
箱荒沢(ハコアラサワ)第1
通称:鬼ヶ沢主杖流し
通称:執状流し、大沢、手杖沢。ペンキで「主杖 ー・ー」と書かれている場所。ここは「主杖流し」の取り付き。富士山頂をメジャーな登山道以外で、山頂を目指すバリエーションルートとして紹介されているところです。シーズン中はこのルートを登る方も多いので、落石に注意が必要です。通称のひとつ「執状流し」は執達状が由来とされています。執達状とは御教書の事で、目上の人からの指示書や命令書の様なものです。おそらく富士山の神様からの御言葉がこの沢を通って命令下達されたのでしょう。桜沢
通称:修杖流しやアラナ沢竹沢
通称:白草流し天の浮橋
崩落寸前の丸太を寄せ集めた木橋。十数年前から朽ち果てる寸前の状態ですが、2019年はまだ残っていました。不動沢
通称:大流し大沢(大沢崩れ)
通称:鬼ヶ沢。現在の大沢崩れの場所です。大沢崩れ【ヤマレコ地名データ】
大沢休泊所(お助け小屋)
前沢
通称:ナメ沢や滑沢流し、横吹き、前谷など多いがナメ沢と呼ばれることが多い。前沢【ヤマレコ地名データ】
二番沢
通称:赤沢や木花沢。木花沢の「木花」は富士山の女神「木花之佐久夜毘売(このはなのさくやびめ)」と思われます。一番沢
通称:桜沢や不浄流し。小さなクサリ場があり、道幅が狭く落石に注意しての通行が必要。仏石流し
通称:仏心沢。一説によると、仏様の形をした大小の石がある事から呼ばれているとか。仏石流し【ヤマレコ地名データ】
滑 沢
通称:奈目沢や青滑沢。山頂方面と山麓の眺めがよい場所。天気が良いと南アルプスも見える。御殿
白草流し
通称:赤沢。富士山北側にある峰の白山岳から麓に向け大きな沢が目立つ2本があり、麓に向かって左が白草流し、右が大流しです。両方の沢とも季節により土石流がたびたび発生します。青草流し
1996年に命名されたまだ若い沢。大流し
通称:仏石沢その他
【そのほか私が個人的に思ったことを記載しています。】冒頭でも紹介しましたが、御中道巡りは「富士山頂に3度以上登ったことのある冨士講修験者のみに許された巡礼の道」と言い伝えられています。それほど難易度が高いルートということですね。まして巡礼の盛んだった昔に比べ、現在は巡礼目的の修験者は皆無で、探求心を持った一部の登山者が訪れている程度です。そのため標識やマーキングも少なく踏み跡も薄いなか、自らルートを探せる技術のある方でないと道迷いの危険性が高いです。そして大沢崩れの崩落も進んでいるし、その他の場所でも崩落や滑落の危険個所があります。
そんなことから「お中道巡り」は、情報収集や装備など十分に準備をし自分の技量を把握して行動しないと大変危険な登山となってしまうなと感じました。