写真のヒカリゴケは、長野県岐阜県にまたがる焼岳の登山道で見かけたものです。針葉樹林帯の中にある岩と岩が重なりあってできた空洞内に生育していました。ヒカリゴケってなぜ光って見えるのか不思議ですよね。今回はヒカリゴケが暗い洞窟などで光る仕組みをお話しします。
実はヒカリゴケの光って見える苔のような部分は、苔用語でいう植物体(コケの本体)ではなく原糸体(胞子などが発芽してできたコケの赤ちゃん)であるということ。そしてヒカリゴケが光って見える際の光は、ホタルのように自らが発しているのではなく、暗闇に届くわずかな光をレンズのように集めて反射した光が、私たちの目に入って来ている現象だったのです。
まず原糸体の細胞の一部が球状になっていてレンズの役割をし、光合成をする葉緑体に光を集めます。葉緑体を通過した光の一部が反射して細胞外に出て反射光として黄緑色に光って見えます。そしてたくさんあるレンズのような小さな細胞たち皆が、暗がりに僅かに入ってくる太陽の方向をむくため、一定の太陽光の角度と見る人の角度によって光って見えたり光らなかったりの差が出てきます。
しかし周辺環境のちょっとした変化により、太陽光がたくさん入るような環境に変わってしまうと、他の植物が入り込みヒカリゴケは駆逐されてしまいます。ヒカリゴケは他の植物にとっては暗すぎて生育できない環境だからこそ、生存競争で勝ち残れているのです。